かなり今更ですが、積読していたTHE MODELを読みました。
紹介を兼ねて印象に残った部分だけ纏めておきます。
THE MODELは、セールスフォースの日本法人の立ち上げ、マルケトの日本法人代表を務めた福田氏が著者です。
主な内容は、セールスフォースの営業組織を作り上げた経験とマルケトを立ち上げた経験を基にした福田氏が考える理想の組織と仕組みになります。
余談ですが、現在のセールスフォースの日本法人は売上が100億近い規模に成長しています。
営業組織に関する考え方が中心ですが、組織論や営業論を見ると、営業だけにとどまらない福田氏の経営全体に対するフィロソフィーを感じる事ができます。
THE MODELによる営業組織とは
THE MODELの指す営業組織の概要
こちらは既にセールスフォース自身のサイトで紹介されているので、そちらをご紹介するにとどめます。
簡単に概要をお伝えすると、営業組織を顧客のファネルを基に分業(一方、部門間の連携が非常に重要になるので、単純な分業を取り入れるのにはご注意ください)した上で、KPIを徹底的に管理してプロセスを科学的に改善していくアプローチになります。

個人的に面白かったのが、福田氏がこのアイデアをセールスフォースだけでなくザ・ゴールからも得ている事。
確かに私もザ・ゴールを初めて読んだ衝撃は忘れられません。
ボトルネックの特定や在庫の管理。ボトルネックと関係ない部分最適で逆に課題が山積していく事…。THE MODELの中でも暗に在庫の例えが出てきていました。
これを踏まえると、製造業の生産管理を営業に適用した概念と言えるでしょう。
印象に残った考え方
KPIの意味を知る
本書を通じて感じたのは、KPIを徹底して管理しながらも、その数字の意味が報告者によって変わるリスクの高さです。これは本書終盤の優れたマネジメントの視点でも明示されていますが、非常に重要と思いました。
SaaS向けのビジネスと現在のSFA・CRM(顧客管理システム)を駆使すると、ユーザーの動作がほぼ全て数字で取れるため、定性情報よりKPIが優先されがちです。
これは定性情報だけを基にして誤った意思決定を続ける事より良いのかもしれませんが、数字だけを追ってしまうと、顧客が離脱している本質的な理由や、組織が機能不全に陥りかけている兆候を逃してしまう事があります。
科学的に数字で判断しつつも、実際に何が起こっているかを理解することの重要性を感じました。
リサイクルとリードスコアリング
個人的に面白いと感じたのが「リサイクル」と「リードスコアリング」の概念です。
リサイクル
リサイクルは、ある程度見込みはあるが、即座に契約に至る事が難しい顧客候補を管理する仕組みになります。(完全に見込み客ではない場合、「デッドエンド」として明確に区別)
営業組織を管理していると、担当者が現在担当している案件の管理が主流になる事は多いでしょう。そして、見込みがないと判断した場合、デッドエンドと区別せずに管理するケースもあるでしょう。
これを、リサイクルとして明示的に管理することは、単純ですが非常に力強い概念だと感じました。
リード・スコアリング
リード・スコアリングは、消費者むけマーケティングのアイデアを企業向けの営業に応用した概念という印象を受けました。
具体的には、見込み客の魅力度を以下の二軸で判断します。
- 属性スコア:企業規模、業種、役職等の属性情報(セグメント)
- 行動スコア:ウェブサイトへのアクセス等の行動情報(購買意欲)
これをデータで半自動的に算出することで、従来であれば担当者が主観的に判断していた優先付けが科学的に実施可能になります。
商談ではビジネス課題を認識する事が最優先
これは当然ですが商談数を増やそうとしたり、自社の商品を紹介することに集中したりしてしまうと、陥ってしまう罠だと感じました。
これを理解する観点では、以下の4点だと整理されています。
- ビジネスイシュー:顧客のビジネス課題
- 問題点:プロブレム
- 解決策:ソリューション
- 効果:ベネフィット
このソリューションに自社の提案内容が合致することが肝になります。
稟議決裁の確認ポイント
稟議決裁の確認ポイントはどの事業でも汎用的だと感じました。
結局どのビジネスでも最後は決裁を超えていかなければ購買に至りません。
稟議を滞りなく通過するにあたっての確認ポイントは以下が紹介されています。
- 最終承認者はだれか
- 発注者へサインする人はだれか
- 稟議決裁は電子承認か、紙での回覧か、口頭承認でOKなのか
- 取締役会や経営会議での決議が必要か否か
- 起案者が過去に同じような金額の決裁を通したことがあるか
個人的には5番目が参考になりました。当然経験がないとプロセスが通らなくなるリスクは上がりますね。
このリストをビジネス経験を通じて増やしていくことが大事と書かれています。
如何だったでしょうか。
あくまで私に印象が残った項目の一部になりますし、「KPIの意味を知る」に記載した通り、本書からは様々なニュアンスを感じました。
まだ読んだ事の無い方は是非本書を手に取って読んでみて頂ければと思います。
また、個人的にはシリコンバレーの伝説の一人であるマーク・ベニオフとの思い出も非常に面白かったです。
マーク・ベニオフについては、トレイルブレイザーも面白いです。THE MODELでも少し垣間見れますが、マーク・ベニオフの頑固なまでのフィロソフィーを感じる事ができます。
どちらかというと他の経営に関する本を読んでみたい、という方には以下の記事もお勧めです。
独学でMBAの勉強をするならこの本/留学前の準備にもお勧め(思想・ストラテジー・イノベーション編)
今回は以上です。
少しでも皆様のお役に立っていることを祈っています!